https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?
Carl Benedikt Frey† and Michael A. Osborne‡ September 17, 2013
2013年秋に発表されたこの論文で、現存する702の職業の中で、堂々と第6位にwatch repairs=時計修理職人が選ばれています。
何の順位かというと、10~20年後にはなくなっていると予想されている職業です。
無くなる可能性はなんと99%と書かれています。
今は2020年の終わりですが、論文発表からもう既に7年が経ちました。
この論文によると47%もの職業がIT化、AI化によってなくなると言われていますので、そう悲観的になる必要はないかもしれませんが、ロボットが時計の修理をするとなると、それはほぼ全部品交換ということになります。
そうなると部品交換を少なくし、メンテナンスを通じてできるだけ現状を留めながら時計を愛用していくということができなくなってしまいます。
私達が直面しているのは、ロボットによる時計修理という仕事がなくなることよりも、時計修理職人の高齢化や若者の成り手不足の問題です。
「近くの時計屋に修理を依頼したのですが、時計屋の職人さんが修理途中でお亡くなりになりました。その結果、分解されたまま時計が返却されてしまい、どうすればいいか困っております。返却された部品もお渡ししますので修理をしてくれませんか?」
「いつも頼んでいた時計修理屋が廃業したため、千年堂さんに修理依頼をさせてもらいます。」
「いつもは百貨店で修理を依頼していたのですが、百貨店が閉店してしまったのでネットで千年堂さんを見つけました。修理をお願いします。」
などなど、百貨店閉店は高齢化によるものとは違うかもしれませんが、全国各地で修理職人の高齢化により職人が減少傾向にあり、千年堂に修理依頼をされる方が増えてきております。(高齢化問題というのは時計修理職人に限ったことではありませんが。)
私たち千年堂が取引する各工房は、一人でやっているところはありませんので、分解途中で返却というのはまずあり得ないですが、成り手が減ってきている分、少しずつですが修理キャパが縮小傾向にあります。
近い将来、時計修理が完全にロボット化された場合、まずメーカー側が導入すると思いますし、その場合は人手がかからないので格安で修理ができるようになると推測する一方で、現状のメーカー修理は大幅な値上げ値上げのラッシュという印象です。
残り13年以内で人が行う時計修理というのはなくなるかもしれませんが、メーカー修理がロボット導入すらしていないようですし、格安にもまだなっていないため、まだまだ我々のような一般の時計修理業は高級時計ユーザーにとって必要なのかなと思っています。
例え修理キャパが少しずつ減少していったとしても、千年堂は時計を大切にする人の修理ニーズがある限り、メンテナンスを通じてお役に立てるよう引き続き努力して参りますので、今後ともよろしくお願いします。