腕時計の精度について

日頃より「時計修理の千年堂」をご利用頂き、誠にありがとうございます。

本日は、腕時計の修理の際の精度についてお話ししたいと思います。

腕時計の「精度」は腕時計の価値を大きく左右する要素です。
修理においても重要なファクターですが、改めて腕時計の精度とは何か、どのように測定されるのか、そして機械式時計、クォーツ時計、その他の時計の精度の違い、千年堂の精度規格などについて解説します。

1. 腕時計の精度とは
腕時計の精度とは、時刻のズレがどれほど少ないかを表す指標です。精度が高い時計は、長期間使用しても時刻のズレがほとんど生じません。
一般的に、機械式時計の精度は1日にどれだけの誤差があるかで表され、これを「日差」と呼びます。
一方、クォーツ時計の精度は1ヶ月、1年の誤差で表されることが多く、これを「月差・年差」と呼びます。
• 日差:1日にどれだけの時間が進んだり遅れたりするか
• 月差・年差:月単位、年単位でどれだけの時間が進んだり遅れたりするか

※精度に関しては、「累積誤差」となります。精度には後述する温度や環境による変化があり、プラスとマイナスが打ち消しあうため、例えば1時間に1秒ズレたから日差24秒!とはなりませんし、1日に1秒ズレたから月差30秒!とはなりません。

2. 精度の測定方法
腕時計の精度は、専用の計測器で測定します。
機械式時計では、「タイムグラファー」と呼ばれる機器を使い、振動数や日差をチェックします。
クォーツ時計は「クオーツテスター」と呼ばれる機器を使い、時計の針を動かす小さなモーターの駆動間隔から月差・年差を推定します。
• タイムグラファー:時計の音を拾って、1日あたりの誤差、振り角、姿勢差(時計の置き方による精度の変化)を測定
• クオーツテスター:小さなモーターの磁界を拾って、月差・年差を測定

3. 機械式時計の精度
3.1 構造と仕組み
機械式時計は、ぜんまいの力を利用して歯車を動かし、時間を刻む仕組みです。手巻き式と自動巻き式があり、いずれもぜんまいのほどける力を動力として利用しています。これにより、非常に精緻な職人技が求められる反面、外部要因による誤差が生じやすいという特性があります。
3.2 精度の特徴
• 一般的な精度:日差±20秒から±40秒程度
• 高精度モデル:クロノメーター規格を満たすモデルは日差−4秒〜+6秒以内
• 影響要因:温度、磁気、振動、置き方(姿勢差)など
3.3 クロノメーター規格
スイスのCOSC(Contrôle Officiel Suisse des Chronomètres)が認定するクロノメーター規格は、厳密な精度試験をクリアした時計に与えられます。テストは15日間にわたり、異なる温度や姿勢で行われ、日差−4秒〜+6秒以内の精度が求められます。
3.4 千年堂の機械式時計の精度規格
千年堂では基本的には日差±15秒以内を修理時の精度規格としています。
また、機械式時計は姿勢差等による影響が大きいため、日常で外歩きを多くされる方と、デスクワークで時計を外して机上に置く時間が長い方で大分条件が異なります。
工房では、携帯精度ではなく、時計の文字板が上を向いた状態での計測精度を基準としています。
精度は工房で時間と手間をかければより高精度に追い込むことも可能ですが、クロノメーター規格を実現するためにメーカー修理と同じ金額になってしまっては本末転倒です。
千年堂の存在意義のひとつである「コストパフォーマンス」の観点や、機械式時計のオーナーであれば必ず経験するであろう「累積誤差やぜんまい動力切れによる止まりから、いずれにせよ、しばしば時刻修正を要する」等の観点から、ほどよい精度と言えるのが「日差±15秒以内」だったからです。
工房では可能な限り「誤差はできるだけ少なく、やや進み」に調整していますが、千年堂精度規格範囲内での最大コストパフォーマンスの実現を重視していますので、ご理解頂けますと幸いです。

4. クォーツ時計の精度
4.1 構造と仕組み
クォーツ時計は、水晶振動子を用いた電子回路で動作します。水晶は一定の周波数で振動する特性があり、その振動を基に正確な時間を計測します。
4.2 精度の特徴
• 一般的な精度:月差±15秒から±30秒程度
• 高精度クォーツ(HAQ):年差±10秒以内のモデルも存在
• 影響要因:温度(特に寒暖差)が大きく影響
4.3 千年堂のクォーツ時計の精度規格
千年堂では、クォーツ時計の修理精度は「時計の回路そのものの精度」となります。
実は、他の時計修理事業者も含めてですが、ほとんどのクォーツ時計は精度の微調整ができません。回路パーツに水晶振動子、分周回路などが搭載され、電池からの正しい電圧を受けると1秒間に1回または2回のパルスを発信し、モーターを動かす仕組みだからです(秒針がない2針のモデルは、さらにパルスを減らして消費電力を節約したりしているものもあります)。メーカーや製品によっては、回路のパターンを切断したり、特殊な装置でデータ書き込みをして調整可能なものも存在しますが、非常に稀なケースですし、基本的にはメーカー修理でしか対応できません。
従いまして、クォーツ時計の精度は正しくムーブメントを組んだ時点で、回路次第となります。
正しくムーブメントを組んだにも関わらず精度が出ない場合は、回路交換が必要となります。

4.4電波時計とGPS時計
いずれも、水晶振動子を利用したクォーツ時計の一種です。電波時計は、標準電波を受信して自動で時刻補正を行うため、理論上の誤差はゼロです。GPS時計は、衛星からの時刻情報を受信して補正するため、世界中で高精度を維持できます。
ただし、いずれも補正による累積誤差のリセットを前提としているため、補正をしない(できない)環境だと、上記のクォーツ時計の一般的な精度かそれ以下となる場合が多いです。
※大変申し訳ありませんが、千年堂では電波時計やGPS時計は修理対象外となります。各メーカーに修理ご依頼をお願いいたします。

5. スマートウォッチの精度
5.1 構造と仕組み
スマートウォッチは、クォーツ時計と同様の電子回路を搭載していますが、スマートフォンと連携することによりインターネット経由で時刻を同期します。これにより、常に正確な時刻を表示します。
NPTというプロトコルにより、ネット回線による遅延を計算に入れて補正するため、電波時計やGPS時計と同等の精度を実現できますが、やはり補正をしない(できない)環境だと、上記の一般的な精度かそれ以下となる場合が多いです。
5.2 精度の特徴
• 誤差のない時刻表示:インターネット同期のため、常に正確だが、ネットワーク次第
※大変申し訳ありませんが、千年堂ではスマートウォッチも修理対象外となります。各メーカーに修理ご依頼をお願いいたします。

6. 各種時計の精度比較
種類 精度 特徴
機械式時計 日差±4〜±40秒 職人技が光るが外部要因に弱い
クォーツ時計 月差±15〜±30秒 温度の影響を受けやすい
高精度クォーツ 年差±10秒以内 温度補正機能付きもある
電波時計 理論上誤差なし 標準電波を受信
GPS時計 理論上誤差なし 世界中で高精度を維持
スマートウォッチ 誤差なし(ネット同期) インターネット同期

7.まとめ
腕時計の精度は、時計の種類や技術、使用環境によって異なります。機械式時計は伝統的な技術と職人技が詰まっている一方で、クォーツ時計やスマートウォッチは現代技術を駆使して高い精度を誇ります。
いずれも、時刻を知らせてくれる「時計」としての機能のほかにも、便利な機能やファッション性、ブランドの魅力などが詰まっています。
あらゆる場面で最適な時計というものはありません。購入の際には、自分のライフスタイルや用途に合わせて、必要な精度やデザイン、ブランドを考慮して選びましょう。
筆者も機械式時計が好きでいくつか持っていますが、さすがにアウトドアの際は重いため、スマートウォッチを使用したりしています。
使っているうちに、それぞれに愛着が沸くので、ぜひ色々な時計の購入を検討してみてください。

8.最後に
「時計修理の千年堂」は、
• 機械式時計
• クォーツ時計(高精度モデルを含む)
の修理に特化した修理会社です。

皆さまの大切な時計をメンテナンスさせて頂く機会をお待ちしております。
末永くご使用していただくためにも、購入後3~5年経過しましたら、是非千年堂でのオーバーホールをご検討ください。

千年堂理念
「時計を大切にする“あなた”の一生涯のパートナーとして、最高の時計修理・オーバーホールサービスを提供し続けます。」

時計の修理は千年堂にお任せください。

千年堂では一流の時計技師による最高の技術をリーズナブルな価格で提供しています。

もしロレックスやオメガなどの高級時計のメンテナンスのことでお困りでしたら、『時計修理の千年堂』にご相談ください。

メーカーでの修理を断られてお困りの方もパーツ次第では修理対応が可能な場合もございます。まずは一度お問い合わせください。

あなたの大切な腕時計が末永く時を刻み、愛され続けることを願って私たちは修理をしています。

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